マニュアル式TTL中央部重点全面測光
横走り布幕フォーカルプレーンシャッター
B・1〜1/1000秒、機械式
電池 SR44×2 または LR44×2
寸法:135.5×82.5×49.5mm
重量:495g(本体のみ)

Mシリーズの中でも特に人気のMXです、おかげで最近まで手に入れられないで居ましたが、オークションを覗いていたら、アタリは少ないものの、幕不良、貼り皮ボロボロ、シャッターロック固着(後に接着剤で固まっていることが判明)のジャンク品が出ていたので、好みの黒でもあり迷わず精進してしまいました。
実は以前からMXの幕交換に挑戦してみたいと思っていたのです。(2003年9月記)



警 告
 ここで紹介するのは、MXファンの方に少しでも内部を御覧頂く機会をと思ったのであり、個人修理を薦めているのではありません、修理によほどの自信がある人はともかく、この報告を見て私もやって見ようとは決して思わないで下さい、確実にMXのバラバラ残骸が出来上がります、質問なども一切お受けできません。

白く丸いのはシャッタースピードを電気信号に変える可変抵抗。
右下の半月状オレンジ色のものはチャージ確認表示。
電池ケースと幕のテンション調整ネジ。

ハンダ付けが酷い、多分前の所有者が外したのだと思う。
幕がたわんでいるのが分かると思う、この原因は幕を引っ張る糸がプーリーから外れたためだった。

幕自体もゴムが劣化しているので交換するしかない。

シンクロ接点部

ここも外した形跡がある。
セルフタイマー部

セルフタイマーレバーの固定ネジはMEと違い右ネジだった、これは絞込みレバーを兼用しているからと思われる。
ミラ−BOX底部

エアーダンパーが見える。
ペンタ右上、可変抵抗器が並ぶ、左上と右下が露出調整用、右上はローバッテリー警告の電圧調整、左下は触るべからず。(秘密だけど、低照度時の露出調整用)
ペンタ左上、このころのフレキはとっても丈夫でいいね、簡単には切れません。
スローガバナーと低速制御用のギアを外した状態、残るのはミラーチャージレバー(中央の太いの)と、同リターンレバー(右下の小さいの)。

シャッター幕巻き戻し軸

細い糸のようなものはシャッタースピード表示を動かすためのもの。
巻上げ部

一番大きなギヤが先幕の移動に合わせてほぼ一周する。
その上に見えるレバーが後幕の動作開始レバー、このレバーを先幕が何処に有るときにたたくかで高速側のシャッタースピードは決まる。
幕交換のためには殆ど分解しなくてはならない。
こんな部品が次々に…
シャッター幕巻き戻しシャフト
古いシャッター幕、照かりが分かると思う、ゴムも部分的に剥がれていた。
MXはOM−1同様、本体の高さを低くするためにシャッターリボンではなく、糸を使っている。
新しい幕に交換
組み立て中

MXは再組み立て時に調整する部分が多いのでとっても大変です。
シャッタースピード表示の組み付け調

少々ずれても問題ないが、ファインダーを覗いたときに気になる部分なので慎重に調整する。
中央部に見えるのがシャッタースピードを下部のスローガバナーに伝える軸、その上に小さなプーリーと糸が見えると思う、この糸が左側のシャッター速度表示を動かす糸、MEではシャッタースピード表示は右側(ファインダーを覗いたときは左側)なのに、MXは左側(ファインダーを覗いたときは右側)、私は表示は左側が好きなのでMEの方が好きなんですけど、MEと違って右側は密度高いですから、表示を左側にするしかなかったんでしょうか。
荒組完了

貼り皮はボロボロだったので新しいものに貼替えた。
とにかく酷い状態のMXであったが、幸い欠品もなく、時間をかけて修理することが出来た、こうなると白も欲しいと思ってしまう、やばいやばい。(^_^;)

(2004年1月、ジャンク白を入手しちゃいました。)

後  記
 MXはMEなどと違い、内部(見えない部分という意味)に使われているモルトは軍艦部裏側にあるのみで、これも電装基板を押さえているだけであり、他は皆無である(と、思ったら製造時期によるらしい)、当然プリズム腐食などは起こらない(これは多分正しいかな)、設計思想の違いを感じる部分である。
また、機械式でありながら露出計はLEDを使った電子式で、OM-1などのような機械式のメーターではない、これは故障しにくいと言う意味ではすばらしいと思う、修理中もメーターの針に気を使う必要はない。
 よく”MXは機械式のカメラなので、壊れても調整しながら長く使える”と言う話を聞くが、実際に修理して見ると、このカメラの修理を完璧に出来る人が何人居るのか、そして後何年修理してくれるだろうかと感じた、たとえ修理してもらえたとしても高額の修理費がかかるのは避けられないだろう。
 私のように個人的に使うだけであれば、シャッタースピードの調整も本人が満足すれば良いのだから、実用上問題ない程度でかまわないが、修理業者の場合は必要な精度範囲に収まらなければ修理したことにならないのだから大変である、まあそれは幕交換をすればの話で、実際の修理はそこまで分解する必要もないと思うが。

 そう考えて見たときに、機械式だから電池がなくても使えると言いながらも、露出計なしでどの程度の撮影が出来るか、また今時LR44が手に入らないところに、何時壊れるともしれないクラッシックカメラを一台だけ持って、大事な撮影のために出かけるとは思えないし、当然電子カメラの利用者なら予備の電池ぐらいは携行するであろう、そう理屈で考えると機械式のカメラを選ぶ理はない。
 
 しかし、である、所有する上での満足感は電子式カメラの比ではない、絶対に狂わないウン万円のピカピカの電波式腕時計よりも、毎日何十秒も狂う傷だらけの機械式腕時計のほうが、所有する満足感は計り知れないものがあると私は思う。
 MXは、もし動かなくなったら出来れば専門の業者に修理に出して、それが無理でもジャンクとして手放したりぜず、大切に飾っておいてもらいたいと思う、そんなカメラである。