PENTAX S2(前期)




35mmフォーカルプレーン一眼レフカメラ
シャッター:機械式布幕横走りフォーカルプレーンシャッター
1/500〜1秒、B、T Xシンクロ=1/40秒
寸法:145×92×53mm
発売年月 1959年 

分解組み立て難易度10段階評価
 5

S2後期型の修理をした時に、やはり私と同い年の前期方を修理してみたいと思っていたのです、私の体も大分ガタきてますからね、カメラも相当ガタがきてるでしょうから。
そんなわけで手に入れてはあったのですが、なかなか時間が取れなくてここまで来てしまいました。

今回はシャッター幕動作不良です、S2後期の時と同様に幕交換と各部の分解清掃をすることにしました。



幕はこんな状態。
交換以外に道は無い(爆)。
分解を始めたがS2後期の時と違ってとにかく汚れが凄い。
幕を剥がしてみた、リボンは切ったのではなく、切れていた。

ところでS2の前期型はX接点に先幕の竿を利用している、S2後期型の幕交換の時はリベットを使わずに竿に幕が被さったものを作ったのだけれど、同じ手は使えないということ、こりゃ参ったな、リベットなんて手に入りっこないし…

と言うわけでリベットは手作りすることにした。
竿は再利用するのでリベットを外す。
竿の隙間にカッターナイフを入れて丁寧に広げる。
幕はゴムのりで接着されているので、カッターで綺麗に掃除する。
これが結構大変。
次はリベットの作り方。

まずは材料の準備、私が使ったのは100円ショップで売っているアルミ自在ワイヤーと言うもの。
直径1mmのものを探してこよう。
次に何でもいいから鉄板のようなものに1mmのドリルで穴を開ける、深さは2mmくらい。
それからリベットのツバになる部分のために少しだけ面取りをしておく。
アルミのワイヤーがこのくらい出るように切って差し込む。
ハンマーでつぶす。
ここでつぶし過ぎると取れなくなるのでほどほどに(^^ゞ。
ニッパでつまんで回しながら引っ張ると取れる。
軸の部分をピンバイスでつかんでヤスリで仕上げる。
これで出来上がり、軸の太さは1mm、ツバの直径が2mmくらい、全長1.5〜1.8mmくらいが丁度いいと思う。
幕も切り出したので組み立てる。
リベット部に穴を開け、手作りリベットを差し込んでハンマーでつぶせはOK。
ただしあんなリベットである、たたき過ぎは禁物。
なんとか完成。

少々曲がっているけど大目に見てね(^^ゞ。
さて、幕の交換はシャッター幕の制御機構を分解しないでやるか、分解してやるか、少々悩んだが、どう見ても汚れているので分解することにした。

写真中央に見える棒はシャッターレリーズでミラーアップさせるレバーだが、これが有るのでミラーボックスの取り外しが難しい。
短いドライバーを使って外しておくのが良いと思う。
ただし、あの棒を外すとレリーズレバーがこんなことになる(^^ゞ
なので動作確認がやりずらい。
後期型はこんなことにならないようなストッパーがついている。



ご覧の通り汚れが激しい、やはり分解して正解だった。
幕を接着する。

ここまで分解すると接着位置は上下と直角だけ考えればよいので気楽なもの。
幕のセットが完了した。

こちらは後幕の巻き上げ軸を下から見たところ。

小さい歯車が後幕の軸、大きいのは低速ガバナーの引っかかりと、ミラーリターンの仕事をする。
当然だがこの小さいギヤを外さないと巻き上げ軸は外れない、つまり組み立て時にはギヤの位置合わせが必要になる。

写真は巻き上げた状態の位置関係。
先幕の竿。

写真はレリーズ状態で、竿の両端がペイントされていない、ここに接点がくる。
ミラーボックスの幕側から見たところ。

これがX接点で、先幕の竿の両端と接触するようになっている。
さあ、もう一息である。



底部の比較


上が前期型
下が後期型である。


巻き上げ、チャージ側(写真の左側)は大差ないが、反対側は前期型が非常にシンプルなのがわかる。
後期型ではここに先幕のダンピング防止機構とX接点がある。

それと前期型ではシャッター幕巻き戻し軸の固定もバネ棒でただ止めて有るだけなので調整が大変だが後期型ではラチェットになっている。

 前期型と後期型でここまで違うカメラも珍しいのではないかと思う、一見シャッタースピードの最速が1/500秒から1/1000秒に変わっただけ(それだってマイナーチェンジでやることとは思えない)が、X接点の構造や、ミラーの動作機構(半自動絞りから全自動絞りに)が大きく変わっているし、組み立て調整も後期型の方が楽になっている。

 近頃このS2やS3、SVなどは人気が無く、某有名オークションでもジャンクだと1,000円でも落札者がいない状態である、なんとももったいない話だと思う。
どちらかと言えば一般大衆向けの廉価版一眼レフ路線のカメラであるから、その作りがすばらしいとまでは言いがたいし、デザインも無骨で「カッコイー!」とは言えない(^^ゞ
正直言って私も何年か前まではまったく興味が無かったし(^^ゞ
 でもね、今は違いますよ、とっても素敵なカメラですって、私と同い年だし(爆)。