Kowa SE & SER




35mmレンズシャッター式一眼レフカメラ
露出制御:連動式マニュアル、cds測光
シャッタースピード:B、1〜1/500秒
レンズ: 1:2 f=50mm(SEは固定式)
電池:MR-9

レンズシャッター式の一眼レフカメラです、普通はちょっと考えもしない構成ですね、なんでかと言いますと、一眼レフはレンズを通った光をファインダーで覗いているわけですから、ミラーの前にシャッターがあったんじゃ見えないでしょ、つまりシャッターは常に開いていないと一眼レフにならないわけです、でも常時開いているんじゃシャッターって意味ないですよね、どういう構造なのでしょう、興味津々であります。

今回の修理内容は
SE:巻上げロック不良(何度でも巻上げが出来る)、レンズとファインダー汚れ
SER:巻上げ不良
でした。

SE
まずはSEからです、巻き上げロック不良ですが、このカメラの場合、巻き上げロックは写真中央下のレバーが巻き上げた時に出てきてロックになるようですが、どう見ても浮いていますね、これではロックになりません。
原因は単純です、このネジが緩んでいました、締めなおして完了です、後でSERも確認したら同じように緩んでいました、よくある現象なのかもしれませんね。
残るはレンズとスクリーンの清掃ですが、SEの場合はレンズが外れないので、掃除するだけでもここまで分解しなくてはなりません(後で聞いた話ですが、レンズの根元のネジを緩めると外れるそうです(笑))。
中央のギヤはミラーアップ用のギヤです、その上の小さなギヤは露出計をシャッタースピードと絞りに連動させるためのものですが、レンズユニットを外すと位置がずれるので、再組み立ての時に位置を合わせる必要があります。

外す前にまずシャッタースピードを1/15秒に、絞りを開放にセットし、その時の露出計の角度が分るように目印をしておき、組み立てる時は同じ位置に露出計が来るようにします。
なぜ1/15秒の位置か?分解すると分ります(意地悪)。
この後レンズとスクリーンの分解清掃と、露出調整、組み立てをして完了です。

SER
こちらはチャージ不良ということだったので、シャッターの分解をすることにしました。
SEでシャッターユニットが見えるところまでは分解していますので、こちらはここからスタートです。

写真はシャッターユニットを裏側から見たところです、両側のギザギザはリング状になっていて回転します、これはミラーの昇降をするためのものです。
シャッターチャージをするとこのリング状のギヤを回すためのスプリングもチャージされますが、写真の位置でロックされているので回転できません。
シャッターの動作はこのロックを開放することから始まります。
無理なチャージをしたのでしょう、ピンが曲がっています。
左から、シャッターチャージ用ギヤ、シンクロ接点、チャージロックです。
こちらはセルフタイマーユニット。
分解中です、低速ガバナーを外して、チャージ用の歯車の周辺部品も外します。
幕に何かこびりついた様になって動かないので分解して洗浄再組み立てしました。
と、簡単に書くと怒られますので、一言添えておきますが、組み立てだけで1時間以上かかってます、MXの組み立てよりはずーっと楽ですけど、簡単ではありませんよ(笑)



これで完成!っと思ったら意外な落とし穴が待っていました、チャージ不良のカメラにありがちな、無理な巻上げによる破損ってやつですね、シャッターチャージ用のラックギヤが噛み合わないのです、オマケに歯が一個欠けています(>_<)ガーン!
参りましたね、ちょっとがっかりしましたが、幸い打ち抜きプレスのギヤなので引っ叩いて曲げて調整してなんとかチャージできるところまで直すことが出来ました、欠けた歯も問題はなさそうです、しかしそんな状態ですからどれくらい持つかは不明です。

ところでまだ最初に書いたレンズシャッターで一眼レフを可能にした謎解きをしていませんね、常に開放されているシャッターの謎です(笑)
そう、やはりシャッターは常に開放になっていました、でも、そのままではフィルムが感光してしまいますので、ミラーの後ろにもう一枚板があって、フィルムを隠しているのです、そしてシャッターはレリーズと同時に一度閉じます、その状態でミラーと遮光板を上げてやり、再度設定時間だけシャッターを開閉後にミラーと遮光板を戻し、またシャッターを開けるという動作をしています、つまりシャッターは2度開閉をしているんですね、実際にはこれが一瞬の事なので、シャッターが一瞬一度だけ閉じたようにしか見えないのですが、低速にするとなんとなく分ります(笑)。

それにしてもどうしてこんなカメラを作ったのでしょう?やはりコストの問題なのでしょうか、シャッターユニット自体は基本的にレンジファインダー機で使われているものと同じですから、布幕を組み込むよりは安かったのかもしれません、でも私は、それだけではここまで独創的なカメラは作れないと思います、そこに設計者の拘りと言うか、他社には無い物を作る意地みたいなものを感じました。

最後に一言、このカメラのチャージ不良品には手を出さないほうが良いですよ!なんて書くとどうしても欲しくなる人が居るんだな〜(笑)
試 写



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