このカメラは知人から修理を依頼された物です、私のところに届いた時は幕破れ、位置ズレ+無限が出ない状態でした。 無限が出なかったのはスクリーンの下にスクリーンを固定するワッシャーが挟まっているためでした、これは正しい位置に戻して完了です。 幕の位置ズレの原因がなになのか、それが問題です。 | |
シャッター幕の制御関係はシャッタースピードダイヤル側にあるので、こちらから分解します。 まず、写真の貼り革を剥がすと、穴が見えます。 この穴に先を直角に曲げた太目のゼムクリップなどを突っ込んでペンチで引っ張るとカバーが外れます。 | |
こうなります。 | |
シャッタースピード設定ダイヤルを外しますが、その前に1/60秒の位置にしておきましょう。 | |
貼り革を剥がせばネジが出てきます、これをゆるめるとカバーが外れます。 | |
幕の位置がずれている原因を調べてみると、先幕のチャージ用ギヤが破損して、中心軸とズレたためでした。 | |
ギヤを外すには分解が必要です。 ここが高速側の幕のスリット幅を決定する部分ですので、分解前にギヤのかみ合わせにマジックでマーキングしておきます。 | |
このネジを5本緩めるとダイヤルは外れますが、カムが4箇所ありますので、何処にどのローラーが当たるのか確認しておきます。 | |
スペシャルツールを準備します。 | |
割れたギヤを外してみました、この写真では見難いですが、下側に後幕用のギヤがあり、中央に見える黒い部分と下のギヤは一体構造です。 割れているギヤは真鍮製で中心部にはめ込んだ後にカシメてあります。 この真鍮製のギヤはカシメが緩まないように内側に溝が掘ってあるんですが、それが深すぎた上に、カシメが強く、割れてしまったようです。 | |
注意深く分解して脱脂洗浄後にステンレス用フラックスを使って半田付けしました、強度的には銀ロー付けが理想的ですが、割れた状態でも機能していたことを考えると、さほどの強度は必要ないと判断しました、それ以上に銀ロー付け時の温度で下のギヤの強度が低下するほうが心配でもありましたが。 | |
半田付け前と比較してみてください。 | |
一番右上のギヤが幕の巻き上げ軸です、幕交換をする場合には最低でもここまで分解する必要があります。 この状態でこの面を下にすると色々な部品が落ちてきます。 | |
左側が後幕、右側が先幕の巻き戻し軸です。 先幕はここのネジを緩めると外れますが、奥にギヤがあり、嵌め込んであるだけなので落ちないようにしましょう。 後幕はこのネジを緩めた後にラチェット部を外さないと取れません。 | |
この後、幕の交換をしましたが、ちょっと夢中で写真を撮りませんでした。 交換した前後の写真だけお見せします。 | |
交換前の状態です、巻き上げ前の状態ですが、隙間があります。 (HIROさんがアップした写真拝借しました。) | |
交換後の状態です、隙間がなくなりました。 | |
幕の交換をするには、ミラーのリターンレバーの調整が必要になるため、巻き上げレバー側のカバーも外す必要がありますので、少しだけ解説します。 | |
巻き上げダイヤルを外すには、この穴から覗くと見えるネジを3ヶ所緩めます。 後はストラップ金具を緩め、貼り革を剥がせばネジが出てきます。 | |
こちら側は主に巻き上げ関係とミラーの収納機構があります。 | |
@がミラーリターンレバーです、Aの軸が後幕の巻き戻し軸で、この軸が右上のギヤを回し、後幕が巻き終わると同時に@のレバーを押し下げてミラーがリターンし、一連の動作が完了するわけです。 幕を交換した場合はここを調整しないとミラーがリターンしなくなります。 | |