キエフ、シャッター修理




旧ソビエト製、Contaxコピーとして有名なキエフのシャッターユニットである、JFC会友からの依頼で修理する機会を頂いた。
症状はContaxによくあるリボン切れで、新しいリボンに交換してみたがうまく動作しないと言うことらしい、それならと、ついでにリボンも再度張り替えることにした。
リボンなしで色々動作を考えて見たが、どうもこの部分の形状がおかしいと思う、欠けているようだ。
これは左側だが、これと同じようになっていないとおかしいはず。

と言うわけで、真鍮板で作ってハンダ付けしてみた。
これでなんとかなるだろう。

あとは問題なさそうなのでリボン交換をした
まずはリボンをドラムに通す、しかしここにはスプリングが中に入っていて、リボンのような柔かい布は簡単に通りそうにない、そこでフィルムの切れ端にテープでリボンを貼り付けて通してみた。
これでなんなく通った
糸で縫い合わせる。
反対側も縫い合わせる。
縫うときは長めにしてクリップで押さえた状態で縫うと簡単。
縫い終わったら余分なところを切って、木工用のボンドで、ほつれないように固める。
ハンダ付けしたパーツの動作確認。
このシャッターユニットは幕の巻上げのときに後幕だけを巻き上げる構造になっていて、先幕は後幕に爪で引っかかった状態で一緒について行き、この部品によって後幕と切り離されるのである、とても面白い。

何度か確認したが、なんとかうまく機能しているようだ。
これが開放時。
先幕と後幕が繋がっているのが解るだろうか。
チャージ状態
後幕と先幕の間に隙間があるのがわかるだろうか?少しだけ開いている、これが高速のスリット幅そのもので、低速になるほど巻き上げた時に後幕がどんどん巻き取れるようになる、つまりシャッターを切る前からスリット幅を決めてしまうのだ、合理的だが、シャッタースピードが変わると巻き上げの回転数が変わるので、そのままではフィルムの巻上げ幅が変わってしまう、そのため、フィルムの巻上げは途中でキャンセルされるようになってる。
これはまさにシャッターである、ガレージにあるあれと同じ、丈夫なことこの上ない、だが当然重い!これで1/1250秒のシャッターが切れるのかと疑問に思うが、その秘
密は高速シャッター時にはシャッターをリリースする前からスリット幅を決めてリリースで前幕、後幕が同時に動き出す構造にあると思われる。
通常のように前幕と後幕を別々に制御した場合、高速時にスリットを狭くすると幕の移動と共にスリット幅が変わる可能性があり、精密な幕速度制御必要になる、でない
と上下でグラデーションになったり、半分未露光になったりするわけだが、こういう構造にすることでスリット幅が変化しにくくなるので狭くすることができるのだ。
それにしてもこのシャッターで1/1250秒は怪しいんじゃないかと思うが
しかし、この構造は良いことばかりではない、リボンが先幕の先端の溝を通るのでどうしても擦れて切れやすいのだ、Contaxのアキレス腱と呼ばれるのはこのためであ
る。

それにしても、シャッターをユニット化してボディーに組み付けると言う先進的なアイデアがすごいと思う、今なら誰でも考えることだが、これを第2次世界大戦以前に考
えていたのであるから、やはりドイツは只者ではない。