PENTAX LX(前期)




35mmフォーカルプレーン一眼レフカメラ
シャッター:機械・電子式ハイブリッド式チタン幕横走りフォーカルプレーンシャッター
機械式:1/2000〜1/125秒、B
電子式:1/2000〜125秒
Xシンクロ=1/75秒
露出モード:マニュアル、絞り優先EE
マニュアル設定:4秒〜1/2000秒、B
寸法:144.5×90.5×50mm(FA-1付き)
重量:565g(FA-1付き)
発売時価格:112,000円(ボディーのみ)
電池:G13 2個
発売年月 1980年 

分解組み立て難易度10段階評価
 8
配線多数、素人は手を出すべからず。

旭光学工業創立60周年を記念してローマ数字の60にあたるLXとネーミングされたロングセラーの高級一眼レフですね、PENTAXファンなら絶対に欲しい、そういう思いは少なからず有るのでしょう、未だに状態の良いもの、特に後期型は高値で取引されています。

しかし、最高級カメラと言えどもカメラです、特にこの時期に発売されたカメラはモルトやゴムダンパーの劣化は避けられませんが、前期型はメーカーの修理は終了していますので、最近は動作不良の固体がオークションなどに出回るようになってきました。

そんなわけで高級カメラには縁の無い私もとうとうLXを手に入れる日がやって来ました。
嬉しくも有り、寂しくも有りってところですかね(^^ゞ

ジャンク内容はシャッターが切れないと言うもの、確認した所、シャッターレリーズで絞り連動レバーが動作しないで固まっていると言った状態。
どうも絞り連動レバーの戻りダンパーが溶け出している様子、しかもシャッター先幕の下側巻上げ糸がたるんでいるのがフィルム室から確認できる。
したがってミラーボックスを降ろすくらいの事は必要なようだ

LXのセルフタイマーレバーは多機能である、ボタンを押したまま左に回せばセルフタイマー
押したまま右に回せば絞込みとミラーアップ、押さずに右に回せば絞込みとなるし、セルフタイマーはセットした状態でも中央に戻せば解除される。


しかしこれ、どうやって分解するのか見当が付かなかったので、革を剥がしてみた。
なるほど、周りのネジ4本緩めると外れるようですね。
外すとこうなる。

しかし、組み立てるときに思ったのだが、これって外さなくても分解出来るんじゃ・・・(^^ゞ
底蓋を外したところ。

黄色く見えるのがシャッタースピード電子制御用の電磁石。
マニュアル1/2000〜1/125秒は問題なく動作するが、AUTOや低速シャッターが不安定だったり、ミラーアップしてしまう場合はこの電磁石の動作が怪しいと考えるのが妥当だろう。
ASA感度設定ダイヤル部分。

今回分解したLXは初期型だが、ASAダイヤルロックボタンを押すと露出計の電源が入るタイプ。
フロントボードの裏側、X、FP接点の下になる部分だが、配線のまとまりは非常に悪い、まだ高密度実装の技術が確立する前のカメラですからね、この時期のカメラはどこもこんなものである。

絞り連動レバーの戻り部分にあるダンパー。

ごらんのように溶け出してグチャグチャ、こりゃ駄目ですね。
シャッタースピードダイヤルの情報を伝達する線。

ファインダー交換式なので、トップカバーは左右分断されている、電線等の行き来は極力避けるためであろう、電子制御系の部品はASAダイヤル側に集中させ、この4本だけが左右を連絡する。
黄色い線は低速シャッタースピードのダイヤル位置情報用。
その左にある接点で電子式、機械式の電気的切り替えを行っている。
矢印の先が先幕の糸を巻く部分。

巻き上げた状態でここに糸が巻き取られているのが本来なのだが、写真のように左右に外れてしまっている。
基本構造はMXなどと同じだが、スローガバナーの代わりを電磁石が務める。
巻き戻し軸

MXなどよりテンションが強い、布幕でここまでは上げられないんじゃないかな?
絞り連動レバーのダンパー部

写真は溶けたダンパーを綺麗に掃除した後のもの。
写真はシャッタースピードダイヤルを回したときにファインダーの指針を動かすための機構で、こちらはダイヤル側。

シャッターダイヤルを外すと写真のようにワイヤーがプーリーから外れる。
つまり考え無しにシャッタースピードダイヤルを外すと悲惨な事になるということ、最悪の場合ミラーボックスを降ろさないと修理できなくなるのでご注意!
同じくこちらは指針側

ことらもプーリーが有り、外れなくするガイドは無いので、組み立てる時には緩まないようにテンションをかける必要がある。
ごらんのように細いワイヤーが左右を連結する。

写真は指針がAUTOの位置になるようにテンションをかけて固定した状態。
このまま本体に組み付けてシャッタースピードダイヤルをAUTOの位置にした状態で組み付ければ良いはず(^^ゞ

・・・そう簡単には行かないかな?(爆)
こちらはミラーチャージレバーのリターンダンパーで、ミラーボックスの下側にある。

もうグチャグチャだったので交換する事に・・・
こちらは交換

もしあなたのカメラがしばらく放置した後の巻き上げ時の初期に、何かが貼り付いたような重さを感じるようなら、このダンパーを疑うべし。
絞り連動レバーのダンパーも交換。

こちらは透明なポリオレフィンチューブを輪切りにしたもの。
先幕の糸を巻き取る部

外れた糸を巻きなおし、巻きほぐしされない部分を瞬間接着剤で固定する。

ここをうまく固定しないとまた外れる事になる、ただし接着剤を塗りすぎると一瞬にして完全ジャンクの道を歩む事になるので細心の注意を払うべし。

もしあなたのLXがオーバーホールの経験が無く、これからも長く使いたいと願うなら一度オーバーホールしてダンパーやモルトの交換をするように勧めます、なぜならLXはダンパー劣化によって確実に動作不良を起こす日がやってくると考えられるからです。

心配でしたら下記の確認をしてみてください。
1、無限位置の調整されたレンズをセットして遠景を確認し、ピントが来ますか?

2、@のゴムは、べたついていたり、変形したりしていませんか?
  ミラーアップの状態にして確認

3、Aの部分に油が染み出したようになっていませんか?


*Bはミラーの傾きを調節するためのレバーです、もし無限にピントが合わない時はここを調整します。
4、Cのゴムダンパーに爪楊枝等を押し付けた時、変形したままになりませんか?



以上、どれかひとつでも該当すれば、その日はそんなに遠くないと思われます、早めにオーバーホールに出しましょう。



 LXは、その特徴のひとつである防塵防滴構造を実現するために、トップカバーとボトムカバーはシリコンでシーリングされている。
シリコンのシーリングと言えば剥離が困難だと言うイメージが有り、私もしばらく分解を躊躇したが、やはり好奇心は抑えられなかった(^^ゞ
実際に分解してみるとシーリング剤は綺麗に剥離する、そうか、剥離性の高いタイプを使っているんですね。
今回はとりあえず再組み立ての際にシリコンシーリングを行わず、しばらく様子を見て動作に問題ない事を確認してから防塵防滴構造に戻したいと思う。

今回は思いがけずジャンクのLXを超格安で手に入れる事になったが、その操作感(巻き上げの感触、巻き上げ角が小い事、ファインダーの見易さ等、総合的に)が私の好みにばっちり合う、もうLXにどっぷりハマってしまった、おかげさまで絶対に買わないと思っていたLXが3台(^^ゞ・・・・ まあMEにハマったときほどの衝撃は無いけど、お金もかかるしね。

でも今回は幕の交換が無かったのでちょっと物足りないなあ(爆)
あ、ちなみに、間違っても私みたいに素人修理はやらないでくださいね、今回は紹介しませんでしたが、内部は電線が凄いです、ある意味EOSなんか分解するより大変ですので。
まあお金が有り余っていて、修理が趣味って方は止めませんが、愛機を手にかけるのだけは止めてください。