Canon EOS 10QD




35mmマルチモードAF一眼レフカメラ
TTL位相差検出式AF
縦走行電子制御式フォーカルプレーンシャッター(コパル製)
シャッタースピード:1/4000〜30秒・B・X=1/125秒
電池:2CR5型1個
 大きさ、質量:158×106×70mm、625g(ボディ)
発売年月 1990年(平成2年)3月
発売時価格:140,000円(EF35-135mm F4-5.6USM付き)
90,000円 (ボディ)
レンズ:SIGMA ZOOM 28-80 1:3.5-5.6 MACRO

分解組み立て難易度10段階評価
 8
半田付け個所多数、フレキ多数

EOSと言えば初期のものはME Super同様にダンパーが溶け出してシャッター幕に付着して動作不良を起こすことで有名ですね、私も一度ダンパー交換をしてみたいと思っていたのですが、なかなか忙しくて手を出せないでここまで来てしまいました。
今回紹介するEOS10QDは”HIROさん”からの頂き物です、実はもう一台”どる”さんから頂いた同じカメラがあるんですが、それはまた次回の楽しみに取っておくことにします。

10QDはEOSシリーズの中でも初期の物ですから、ダンパー不良は確実に発生する機種ですね、当時の値段からするととても許せませんがメーカーでも設計不良とかじゃなくて寿命あつかいらしいです、どう考えたって10年もしないうちに寿命だって言われても納得できないと思うんですが。

写真のレンズはSIGMAの標準ズームレンズですが、これまたAFが利かなくなるので有名ですね、私の始めての一眼レフだったEOS Kissもこのレンズ付きで購入したんですが、3年目にAF不良になりました、で、当時はカメラの修理なんてしたこと無いですから、カメラ屋さんに修理に出そうとしたら、新品を買ったほうが安いですよって言われたのを良く覚えています、なので今回はリベンジを兼ねて一緒に修理することにしました。

やはりシャッター幕に油のようなものがこびり付いていますが、HIROさんが掃除したのでしょうか、動作には問題ないようでした。
軍艦部は比較的簡単に外れます、ネジ4本ですね。

こちらは特に複雑な配線もありません、分解のために外すのはネジ2本と半田付け3箇所だけです。
こちらは液晶やダイヤル関係があるので外す線もネジも多数です。
シンクロ接点関係の電線が軍艦部に繋がっていますが、これは外さなくてもダンパー交換は出来ます、でも繋がったままでは作業性が悪いし、断線が怖いので外すことにします、でもこの数ですからね、外すのは勇気が要りますよ(笑)。
ストロボの充電回路関係の基盤です、これを外さないとシャッターユニットにたどり着きませんが、やはり電線多数(笑)。
色々外してやっとミラーボックスごとドッサリ外れてきました。
これが溶けたダンパーですね、一箇所だけです。
シャッター羽根も外して綺麗に掃除してラバーを適当な大きさに切って嵌め込みます。
分解ついでにちょと観察してみましょう。

ストロボ用のコンデンサーはなんと巻き上げ軸の中にありました、感電しないようにしようと思って探したのに、見つからないわけです。
ストロボの昇降用ギヤです、ミラーボックスを外すととってもシンプルに見えますね。
こちらも見えるのは電池BOXの電極と、巻き上げモータくらいです。
DXコードを読むための接点ですが、こんなに大変な仕組みなんですよ。
シャッターユニットの制御関係です、この辺は分解しなくてもダンパー交換は出来ます。
いよいよ組み立てにかかります、配線が多いので大変ですが、モルトの交換は無いのでME Superのダンパー交換より時間は掛からないと思います。


   次はレンズ:SIGMA ZOOM 28-80 1:3.5-5.6 MACROです、治るでしょうか?
EOS用のレンズはAFモーター内臓なのです。
動作不良の原因は2箇所あります、写真の中央やや右下側に見えるのがモーターで、上のプーリに掛かっている黒いゴムベルトがありますが、これが緩くなって滑るのです。
ベルトは斜めに切断して瞬間接着剤で貼り合わせれば十分な強度がありますので、ちょっとづつ短くして滑らないくらいの張りになるように調整します。
AF動作不良の原因その2はプーリの下にあるこの歯車が割れるのです、歯車に対して軸が太いので、時間とともにほぼ確実に発生します。

今回は軸の太さを歯車が開かない状態で無理なく入るように細く削り、瞬間接着剤で固めます。

これでなんとかAFも動作するようになりました。
EOSは電子カメラなので、分解には半田付けの経験が必須です、またネジも多いので覚えるのに苦労します、なんでこんなにいろんな種類のネジを使うんでしょうね、間違えても問題なく使えるって事は同じでも良いって事だと思うんですが、何か意味があるのかな?寿命のことを考えているとは100%考えられないですしね、ダンパー溶けても寿命ですで済ませているようですから。
 
2004/12/16追記

カスタムファンクションの設定方法
1、AFボタンとFUNC.ボタンを同時に押す
2、メインダイヤルで設定番号を選ぶ
3、AEロックボタンを押して「Y」または「N」を選択
4、シャッター半押しで終了

設定番号
1、フィルムの巻き戻しモード
 N - 撮影が終わると自動的に巻き戻しを開始する
 Y - 撮影が終わっても巻き戻しボタンを押すまで巻き戻さない

2、巻き戻した時のフィルムリーダーの位置
 N - 完全に巻き戻す
 Y - 少し残す

3、フィルム感度設定
 N - DX コードによる自動設定
 Y - マニュアル設定

4、オートフォーカスの開始方法
 N - シャッターボタン半押し
 Y - AEロックボタン

5、マニュアルのモード
 N - シャッタースピード設定=メインダイヤル、絞り=AEロックボタン+メインダイヤル
 Y - 絞り=メインダイヤル、シャッタースピード設定=AEロックボタン+メインダイヤル

6、手ぶれ警報音
 N - On.
 Y - Off.

7、マニュアルフォーカス
 N - USM の時、セレクトスイッチをMにしてマニュアルフォーカス
 Y - ワンショットAFモードの時、AF合焦後にマニュアルフォーカス設定可能

8、AF 補助光禁止
 N - 低照度時自動発光
 Y - 低照度時のAF補助光の発光を禁止する

9、絞り優先モードでフラッシュ発光の時、シャッタースピードを1/125に固定
 N - しない
 Y - する

10、フォーカスフレームスーパーインポーズの発光
 N - する
 Y - しない

11、プレビュー
 N - しない
 Y - AEロックボタンを押した時に絞込みを行う

12、AEロックボタンの動作
 N - 部分測光のAEロック
 Y - 評価測光のAEロック

13、セルフタイマー動作時のミラーアップ
 N - しない
 Y - 事前にミラーアップをする

14、手ぶれ防止シャッタースピード制限
 N - おおよそシャッタースピードを1/焦点距離以下にならないように制限する
 Y - 制限はしない

15、デート機能
 N - 日付の写しこみをしない
 Y - 日付を写しこむ



HIROさんから、AF、MF不良、中玉群の内側にカビありのEF35−135 1:4-5.6というレンズも頂いていましたので、分解修理をしてみました。

EF35-135mm F4-5.6 USM

レンズ構成 12群 14枚
絞り羽根枚数 5
最小絞り 32
最短撮影距離 0.75m
フィルター径 58mm
最大径x長さ(mm)x(mm) 72 x 86.4
質 量 425g
発売年月 1990年(平成2年)3月
発売時価格 50,000円

このカバーを外さないとマウントは取れない、しかしこのカバーを取るのはちょっと技が必要!なんちゃって、大げさである(爆)。
フレキがニョキニョキ、切らないようにしよう、切れたらサヨナラだよ。
これはもう間違いなく電気製品ですね、ビデオのヘッドでもばらしたような気分(^_^;)
とにかくプラスチック、金属はネジとマウントだけ、あ!モーターもあったっけ。

このカバーを外せば下に超音波モーターがある。
たてに小さな溝が入った部分が超音波モーターの心臓部、ここが超音波で波のように揺れて下に接触したアルミの円盤(ピントリング)を回すのです、つまり接触していなければ動かない、けど押さえ付け過ぎても動かない、微妙なのですね。
今回はこの押さえつけが弱くてAF不良になっていたので調整します。
方法は簡単!一番上のリングを左右に回すと押さえつける力が変わりますので、MFリングを回して距離目盛がやっと動くようになるくらいに調整します、あとはペイント(マニキュア)で固定すればOK!
MF不良も原因は同じなので、この調整で一緒に治ります。

MFのリングは接触部分の磨り減った粉などが内側に付着しているので、ついでに掃除をしました。
次はカビ取りですが、場所は中玉群のそのまた内側です、分解には相当の覚悟が必要(>_<)。

やっとの思いでここまで分解。
左が絞りユニット、中央が中玉群、この内側にカビがあるのです。
しかし、レンズの固定は高周波溶着のようです、簡単にはいきません。
溶着部分をレンズに傷が付かないように丁寧にカッターで切除してレンズが取れました、考えようによってはネジが緩まないのよりは簡単かもしれませんね。

これで気になるカビも取れました。
レンズを戻す時は接着しなければなりません、こういう場所には無溶剤型の接着剤(エポキシタイプなど)を使いましょう、でないと枠が変形したり、揮発した溶剤でレンズが曇ったりします。
それと接着剤はレンズを嵌め込んでから、外側に少しだけ塗りましょう、レンズの浮きが防げるし、万が一再分解することになっても困らないようにね。

あとは組み立てて問題なく使えるようになりました。
このレンズは分解することはまったく考えて無いようですね、なので中玉にカビ出たら処分するのが正しのじゃないかと思います、メーカー修理に出すと中玉群ユニット交換でしょうから、程度の良い中古が買えるほど修理代取られるんじゃないかな、まあ修理してくれればですけど。

でも私のような修理マニアには美味しいレンズであることは確かですね、フルタイムマニュアルフォーカスはちょっとフニュフニュで使いにくいですけど、AFと割り切れば問題ないでしょう。


 


写真をクリックすると試写が見られます。